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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》放射線治療の「暗部」

無駄な「がん手術」が多すぎる理由

2018年2月号

 どんなに医療技術が日進月歩で発展しても、日本人の死因のトップは依然がんで三割近い。毎年八十万人以上が罹患し、このうち約四割が命を落とす。それだけに、がんと宣告された本人や家族は「名医」を探し求める。だが、この名医という冠だけで即断するのは禁物だ。がん治療は、手術、抗がん剤、放射線に大別される。日本では、放射線治療の専門医が著しく不足している現実も知らぬまま、むやみやたらと名医にすがって不必要な手術を受けている患者が後を絶たない。厚生労働省の主導でハコ物ばかりを全国あまねく林立させたはいいが、肝心要の専門医が見当たらない――。そんな放射線治療の「暗部」を照射する。
 日本で放射線治療を受けるのは、がん患者の二五%だ。一九九〇年代より三倍に増えたものの、先進国の中では際立って低い。ちなみに米国は六六%、ドイツは六〇%、英国は五六%である。手術と放射線治療の有効性が変わらないことが医学的に証明されている頭頸部や前立腺のがんでも、日本では手術を受ける患者が多い。
 例えば、口腔がんの患者のうち、放射線治療を受けるのはわずか一八%にとどまっている。都内の大学病院で口腔がんの・・・