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経済

《企業研究》富士フイルムHD

「ゼロックス買収」は自滅の始まり

2018年3月号

 電子写真技術「ゼログラフィー」を生み出し、かつては米アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が見学に訪れて、パソコン「マッキントッシュ」やマウスの原型に関するヒントを得たともされる米パロアルト研究所。そしてその社名は日米で一時「コピーを取る行為」の代名詞にすらなった。
 そんな研究開発機関を傘下に持ち、絶大ともいえるブランド力を誇る事務機器の名門、米ゼロックスを富士フイルムホールディングス(HD)が“タダ”で手に入れる。買収スキームはこうだ。
 まず富士フイルムHDが七五%、米ゼロックスが二五%を出資する合弁会社の富士ゼロックスが金融機関から六千七百十億円を借り入れ、その資金で富士フイルムHD保有の自社株を取得、米ゼロックスの完全子会社になる。一方、富士フイルムHDは富士ゼロから得た資金を米ゼロックスの第三者割当増資の引き受けに使うが、これだけでは発行株の過半を握れない。そこで米ゼロックスは二十八・五億ドル(三千百三十五億円、一ドル百十円換算、以下同)を借り入れ調達して既存株主に二十五億ドル(二千七百五十億円)の特別配当を実施し、時価を切・・・