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連載

皇室の風116

継承儀礼の過剰感Ⅳ
岩井克己

2018年4月号

 あんなに高い位置に登壇するのには、新天皇にもややためらいがあったようだ︱平成二年、「即位礼正殿の儀」での高御座登壇について、宮内庁幹部からそう聞いたことがある。
 日本国憲法下、初の象徴天皇の即位礼。宮内庁参与らにも意見を聴いたが、結局は大正天皇の時に新造され昭和天皇の時にも使われた高御座が京都から移送して使われた。
 国民を代表して即位を寿ぐ役回りの海部俊樹首相(当時)の側にも戸惑い、違和感があったようだ。
 往古は中臣氏が「群臣」を代表して宮殿の十八階段下の地面に立ち、はるか殿上の高御座上の新天皇を仰ぎ見て「寿詞」を述べて万歳を叫んだ。大正・昭和の即位礼でも歴代首相が平安装束姿で紫宸殿の階下で寿詞を読んだ。平成二年でも、宮殿の正殿に十八階段はしつらえたものの、国民主権を考慮して、首相はモーニング姿で正殿上に上がって寿詞を読み上げた。一時、保守派からは「せめて松の間外の廊下でやれ」との声まで出たが、本番では首相は敷居を越えて数歩進んで間内に入った。同首相なりのこだわりがあったのだろう。
「天皇陛下万歳」と叫ぶことについても、社会党など野党の批・・・