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経済

東芝・日立「原発事業統合」が前進

「新会長・車谷」で経産省の深謀

2018年4月号

 胸中に深く期するものは何なのか―。電撃的な人事の主役は、その初心をこう語っていた。
「わが国の財産とも言える企業の再建を拝命することは、いわば“男子の本懐”。全身全霊で取り組んでまいりたい」
 四月一日、東芝の会長兼最高経営責任者(CEO)に、元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭氏が就任した。二期連続の債務超過は免れたものの、米国の原発建設の巨額損失によって縮小均衡を余儀なくされた東芝は、今後の成長戦略を一人の元バンカーに託す。この人事が発表された二月十四日、土光敏夫氏以来五十三年ぶりとなる東芝の外部トップ招聘に世間は驚かされたが、謎は今も残る。
 なぜ事業会社ではなく銀行、それも三井住友銀行の元副頭取なのか。当の同行は、二月十一日付朝刊で東芝新会長を報じた日本経済新聞から照会されるまでこの人事を知らなかった。なるほど、車谷氏にしてみれば、事前に出身行へ報告する義理はなかっただろう。なぜなら、車谷氏はちょうど一年前、同行頭取レースの本命と言われながら敗れ、古巣を飛び出した人物だからだ。勢い金融界には疑心暗鬼が広がった。
「車谷・・・