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中国人民銀行が「金融危機」の震源に

異例の「二頭立て体制」で増す不安

2018年5月号

 三月の全国人民代表大会(全人代)で発足した中国人民銀行(中央銀行)の新体制に不安の声が内外で上がっている。易綱氏が新しい行長(総裁)に任命されたものの、組織で最大の権限を持つ同銀行党委員会書記は、銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席が兼務することになったからだ。前任の周小川行長はじめ歴代は党委員会書記を兼任しており、異例の二頭立て。「水と油」とも言える易氏と郭氏の間で政策の亀裂が広がれば、株価、不動産価格の暴落、人民元急落など世界に大きな波紋を広げかねない。

非常時に金融が膠着する可能性

「日本で言えば、日本銀行総裁の上にCEO職を設け、金融庁長官が兼任したようなもの」
 北京に駐在する日本の金融関係者は、今回の郭氏の人民銀党委書記就任をこう評する。銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は銀行業と保険業それぞれの監督機関を今春、統合したものでまさしく日本の金融庁だからだ。
 銀保監会は、銀行の国有企業、地方政府向けの隠れ不良債権の増大に加え、保険会社も海外での不動産投資、企業買収などで債務を急・・・