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経済

原子力規制庁「モラル低下」の醜態

「技官王国」化で暴走の危険性

2018年5月号

 もはや霞が関の公文書の改竄・隠蔽には食傷気味とはいえ、数町離れた東京・六本木(原子力規制庁)の“捏造”は、世間の話題にすらなっていない。
「被規制者(電力会社)に対して厳正な姿勢を貫いている原子力規制委員会としては、今回の不祥事を非常に重く受け止めています」
 四月十一日、定例会見に臨んだ規制委の更田豊志委員長に、いつもの高圧的な物言いはなかった。事務方の規制庁の二十歳代の職員が、環境モニタリング団体から申請された放射性物質の管理変更に関する決裁文書を紛失、昨年夏、発覚を怖れて架空の許可書をパソコンで作成し、上司に「決裁は完了した」と虚偽の報告をしていたことが明らかになったからだ。
 申請者は、原発周辺の土壌・水質調査を行う「九州環境管理協会」。不審を感じて問い合わせた結果、規制庁は事態を認識、慌てて調査と決裁手続きを進めたが、許可は五カ月も遅れた。同十日付で職員は三カ月一〇%減給の懲戒、安井正也長官ら幹部にも口頭注意の処分が行われた。しかし、申請者には「処分の前日に事情説明の電話が一本あっただけ」という。
 不祥事に政・・・