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連載

皇室の風 第117話

継承儀礼の過剰感Ⅴ
岩井 克己

2018年5月号

次の皇位継承まであと一年。三十年前に昭和から平成への継承に接して経験した関連儀礼の過剰感について書いてきた。
 なかでも、神道最大規模とされる大嘗祭や、諸祭儀ごとの期日奉告、勅使発遣、奉幣等々の夥しい関連祭儀は、神事こそが継承儀礼の主役と見紛うものだ。平成の大礼の場合、二十六の主要祭儀のうち国事行為は五件に過ぎず、残り二十一件が関連神道祭祀で、そのほかの祓除や地鎮祭も五件あった。
 来年の継承儀礼では、天皇の譲位に伴う新儀も加わる。宮内官の数は戦前の宮内省の六千五百人から現在は一千人に縮減。神事を行う掌典職も私的内廷職員となり僅少だ。天皇・皇族方や職員らの負担は想像を絶する。
 卑俗な喩えだが、企業規模が六分の一に縮小したあともオーナー家の宗教行事を昔のまま続けるために、身の丈を超える膨大な人的・金銭的コストを払い続けるようなものではないだろうか。
 厄介なのは、神社界を中心に「国民的伝統」と称揚する声は根強いうえ、その「伝統」を誰も再検討できず硬直化していることだろう。
 それら祭儀は戦前、国家事業として「帝室制度審議会」などで練り上・・・