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経済

出光「昭シェルTOB」はやれるのか

創業家の乱から二年続く「逡巡」

2018年5月号

 あれから間もなく二年が経つ。出光興産と昭和シェル石油の合併に、出光創業家が反旗を翻して世間を騒がせたのは、出光の二〇一六年六月の株主総会だった。騒動勃発後二回目となる今年の株主総会も合併決議の展望は開けていない。しかし……。
「いよいよTOB(株式公開買い付け)だな。昭シェルの命は旦夕に迫りつつある」
 出光は四月、社長の月岡隆が代表権をもつ会長に就き、後任に副社長の木藤俊一が昇格した。このトップ人事が発表された二月十四日以来、石油業界の一部では昭シェルに対する出光のTOBが囁かれてきたのだ。なぜなら、トップ人事と同時に出光は、副社長の関大輔、元常務の齊藤勝美を昭シェルへ社外取締役として派遣することを明らかにしたからである。
 表向きは、合併合意時に両社が掲げた“対等の精神”に基づく役員の相互派遣であり、出光の経営委員会にも昭シェル出身の社外委員二人が就いている。しかし、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから三一・二%の昭シェル株を取得済みの出光が、昭シェルの社内外八人の取締役のうち二人を占めた以上、もはや対・・・