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「米朝会談」裏で操る中国

日米は何ら成果を期待できない

2018年5月号特別リポート

 三月二十六日の中朝首脳会談から始まって日米首脳会談、南北首脳会談と続いたあと、「歴史的」米朝首脳会談が開催される。米日中韓朝五カ国のそれぞれ腹に一物ある最高指導者が繰り広げている、複雑な外交はどう解き明かしたらいいのか。十九世紀末に朝鮮半島をめぐり発生した日清戦争前後の顛末を綴った陸奥宗光外相は『蹇蹇録』の中で、当時を回顧して「悚然膚に粟するの感なき能はざるなり」と述べている。
 金正恩・朝鮮労働党委員長が平昌冬季オリンピックを契機に突然微笑外交に転じ、朝鮮労働党は四月二十日の党中央委員会総会で核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止する決定をした。何のことはない。北の現状をあたかも新しい提案であるかのように見せびらかしたにすぎないのだが、報道機関は大々的に取り上げた。最も重要な「非核化」に踏み込むまで、北は今後いくつものマジック・カードを切ってくるだろう。
 突如として北朝鮮と蜜月関係に入った観のある中国は、米国と最悪の関係に突入している。何もしなかったオバマ前政権を見返すかのように、トランプ政権は南シナ海で「航行の自由」作戦を開始し、豪州での米海・・・