三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

イランの難題「ハメネイ後継争い」

米国に翻弄される権力闘争の行方

2018年6月号

 米トランプ政権によるイラン核合意からの離脱の衝撃は大きいが、国家間の角逐だけに目を奪われてはならない。イスラエル、シリア、アフガニスタンといった各国間のパワーバランスはもちろん重要だが、もうひとつ見逃せない事態が進行している。一九七九年のイスラム革命以降の宗教指導体制をめぐる、イラン国内での権力闘争の帰趨を決する可能性があるのだ。
 この間、健康不安説もある最高指導者ハメネイ師(七十八歳)の後継をめぐる駆け引きが活発化している。今後、同師が執政不能になったり、死去したりした場合に備えた動きが進む。後継者争いを演じているのは主に三つの勢力。すなわち穏健派のロウハニ大統領を支持する「現実主義・改革派グループ」と、宗教指導体制の形骸化や社会の変化に危機感を持つ宗教界の「保守強硬派」、それに政治・経済や軍事部門の権益を守りたい「革命防衛隊」だ。
 トランプ大統領は、オバマ前政権時代にまとめられた核合意がミサイル開発やイランの対外的な地域不安定化工作を野放しにしていると批判した。しかし、ミサイル開発を進め、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラやイエメンのシーア派系フ・・・