三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

美食文学逍遥 第18話

赤い果実と恋の唄
福田 育弘

2018年6月号

 六月は、フランスだけでなくヨーロッパがもっとも美しい季節だ。寒すぎず、暑すぎず、すがすがしい空気のなか、草木がみずみずしい若葉をしげらせ、彩り豊かな花々が咲く。
 雨がしとしと降る日本の六月とは大違いだ。一年のうちいつでもフランスに行っていいといわれたら、文句なく六月を選ぶだろう。
 事実、一昨年の研究休暇のさいには、ソルボンヌ大学に招聘されたこともあり、四月から六月にかけてパリに滞在した。十数年ぶりのフランスの六月は、町中や公園での散策、カフェやレストランのテラスでの休憩や食事など、人を戸外へと誘ってやまなかった。
 印象派のマネやモネには、それぞれ『草上の昼食』という有名な絵があり、これらはいずれも六月のさわやかな陽気のなかでのピクニック風景を描いている。こうした巨匠の作品ほどの知名度はないものの、アルベール・フーリエには『イポールでの婚礼』という絵があり、そこには戸外での結婚披露宴の楽しげでくつろいだ様子が描かれている。これも日差しや木々の感じから六月だとわかる。
 実際、六月は結婚シーズンだ。ジューン・ブライドという英語の表現をご存じの・・・