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連載

本に遇う 第223話

アベノウスラワライ
河谷 史夫

2018年7月号

 日本の政治を薄ら笑いが覆っている。国会中継となるとテレビを消す。首相と副総理兼財務相の薄ら笑いを見たくないのである。
 野党議員の質問中、必ずやこの二人は薄ら笑いを浮かべる。馬鹿笑いなら赦せるが、「相手をばかにしたように、声も出さずに、かすかに笑う」(『新明解国語辞典』)のである。野党を小ばかにし、質疑をおろそかにしているからだ。
 何を聞かれても、紋切り型で否認一点張り。およそ虚偽の疑いに満ちた答弁もけしからぬが、あの薄ら笑いはもっとけしからぬ。どうして新聞は咎めないのか。じれったく感じていたところ、毎日新聞の伊藤智永がコラム「時の在りか」で批判したのを目にした。
「モリ・カケ疑惑」で一年半。「うんざりだ」と言い出す輩が出てきた。読売新聞などは社説で「繰り返しの議論に辟易してしまう」と述べたほど嫌気を隠さない。与党新聞なら「言い逃れと開き直り」を繰り返すのはやめて「真摯な説明」をせよと首相をたしなめて然るべしと考えるがそうでない。
 伊藤は「安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の、場にそぐわないニヤニヤ顔の発する負のオーラ」を「うんざり感」の・・・