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死期がきた「戦後国際秩序」

「民主的世紀」から「力と対立の時代」へ

2018年7月号特別リポート

 仏教で言う「末法の時代」に国際情勢は突入してしまったのであろうか。正法、像法の時代を経た後に出現する末法は行もなく、悟りもない形骸化した教えのみで全くの無秩序だ。米英両国が主導して戦後に形成されたイデオロギー、政治、経済、安全保障などの国際秩序は確実に空洞化に向かいつつある。冷戦に圧勝し、米歴史家のフランシス・フクヤマに「歴史の終わり」と一時は言わせた自由主義的民主主義は、冷戦後に登場した米一極時代で繁栄を謳歌した。が、この体制を十二分に利用して超大国に躍り上がった中国は、いまや体制の骨格をなすルールを軍事的にも経済的にも無視するかのように振る舞っている。
 強権政治を代表するかのようなトルコ、民主主義を擬制としているロシア、制度を利用して強権主義を国民に押し付けるハンガリー、ポーランド、経済不安と難民への拒否反応を掻き立てて、ドイツ、フランス、英国、イタリア、オランダ、オーストリアなどに広まったポピュリズム政党の活発化などは、七十年前には誰も夢想もしなかった現象だろう。それよりも、従来の国際秩序を指導的立場から維持しなければならない米国のトランプ大統領が、自らそれを破壊し・・・