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連載

新・不養生のすすめ 第17話

週刊誌の特集に煽られるな
大西 睦子

2018年8月号

「食べてはいけない」「食べてはいけない、はいけなくない」といった話題が週刊誌上で賑やかだ。最近、私のリンについての研究でも、「週刊新潮」と「週刊文春」で論争が起こった。そこで今回は、私の研究を通じて、科学とメディアの情報について読者にも考えてもらいたい。
 私が二〇〇七年に渡米したとき、世界的にリードしているハーバード大学の疫学研究に携わるチャンスを得た。現地で、この研究の考え方・やり方を学べたのは、私の人生にとって大きな財産になった。
 疫学研究とは、大勢の健常な市民を何十年も追跡調査して、病気になった人が現れたら、過去の調査データから原因を探り出す研究だ。私が携わった研究は四十年以上も追跡調査していて、しかもその調査内容は細かく、例えば飲む牛乳が「ファット」か「ノンファット」(無脂肪)かまで調べる。こんな細かい生活習慣に関する調査を二年ごとに行い、コンピュータに蓄積している。協力する市民の数は何十万人という規模。どんな病気がどんな生活習慣に関わるのか、相関関係が見えてくる。しかも、調査中に、がんなどの病気と診断された場合、参加者は、がんの組織まで提供する。遺伝子・・・