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社会・文化

ドイツ・オペラ界に 日本人の「新星」

本場で花開く演出家「菅尾友」

2018年8月号

 ドイツの真ん中にヴュルツブルクという美しい街がある。遥かアルプスに至るロマンティック街道観光の出発点として、日本の旅行者にも知られた古都だろう。
 世界遺産レジデンツを擁する市の中心に、客席七百三十九のモダンな市立劇場がある。人口十二万数千人の地方都市が、オーケストラ、合唱団、歌手、ダンサーらアーティストばかりか、総裁、音楽監督、オペラ監督以下裏方やスタッフを専属雇用。シーズン中の週半分は演劇、オペラ、舞踏を上演する。大阪出身で同劇場専属ソプラノの辻井亜季穂曰く、「分かりやすく言えば吉本新喜劇。劇場はなんばグランド花月みたいなもので、それがオペラをやっています」。
 去る五月十九日、ヴュルツブルク劇場で、アメリカの作曲家ジョン・アダムズの《中国のニクソン》新演出が上演された。ニクソン米大統領の電撃訪中を描く一九八七年初演のこの作品、題名から風刺パロディと思われそうだが、傑作と評価が定まったシリアスな現代オペラの定番だ。
 周恩来や江青ら主要キャストに専属の日本人歌手が起用され、舞踏団にも日本人名が複数並ぶのは、アジア人役だから当然に思えるかも。そんな中で・・・