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社会・文化

「ヒグマ異変」に震える北海道

「出没急増」が映す人間社会の歪み

2018年8月号

 北海道・利尻島にヒグマが泳いで渡り、百六年ぶりに上陸した。今年五月三十日の足跡確認以降、島内を一周するように足跡やフンが見つかり、自動カメラに大型のオスとみられる姿も写った。札幌市では今年のヒグマ目撃・痕跡確認が過去最多の百件近くに上り、商店街にも姿を見せている。旭川市では森林公園にヒグマが七十年ぶりに入り込み、入り口閉鎖が五月から続く。メディアでは「ヒグマ異変」「怖い怖い」という報道が続くが、この現象は偶然か、必然か。背景には多くの自然災害とも共通する、人間社会の変化や住民の意識のギャップがのぞく。

「銃声」に寄ってくる個体も

 北海道北端に浮かぶ利尻島は一九一二(明治四十五)年五月二十四日、海岸でヒグマが住民に撲殺された記録があり、百六年目の上陸となる。海を渡る距離は最短でも二十キロあるが、「ヒグマは泳ぎが得意で、渡海は十分可能」と専門家は見る。この時期、対馬暖流の潮流は緩い。
 なぜ島を目指したのか? 百六年前も五月下旬。ちょうどヒグマの繁殖期にあたる。ともに若く元気なオスだったことから、「・・・