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社会・文化

自衛隊「災害派遣」

美談の陰に隠された「重い課題」

2018年8月号

 西日本を襲った豪雨は死者二百二十人を超える惨禍となり、家屋を喪失した家族ら四千人超の人々が避難生活を強いられた。人命救助や救援物資の輸送、瓦礫の撤去。酷暑の現場で警察や消防と共に活動していたのが、災害派遣で投入された自衛官たちで、そのほとんどが陸上自衛隊である。今でこそ、彼らは災害対処に不可欠の存在になったが、あくまでも本来の最大ミッションは国防である。
 この陸自は日本近海の警戒監視に当たる海上自衛隊、スクランブル(対領空侵犯措置)を担当する航空自衛隊とは異なり、平時の実任務はほとんど担っていない。それゆえ、陸自にとって災害派遣は存在感をアピールする機会でもある。だが、十五万人の巨大組織で高いコストの陸自がこれからも災害派遣の主役である必要性はあるのだろうか。自衛隊災害派遣の来し方を検証し、その課題と行く末を探る。
 西日本豪雨災害で活動した自衛官は陸自を主体に三万人を超えた。そのエリアは広島、岡山、愛媛各県、京都府など広域に及ぶ。活動は当初は人命救助が目立ち、時間の経過とともに、給水・給食支援、行方不明者捜索、道路復旧、物資輸送、入浴支援、防疫支援、瓦礫撤去と・・・