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社会・文化

防災計画「歴史軽視」の命取り

危ない「ハザードマップ」を作り直せ

2018年9月号

六月の大阪府北部地震や七月の西日本豪雨に続き、八月には台風が相次いで日本を襲った。まさに「災害列島」の様相を呈しているが、防災計画が適切であれば救えた命は確実にあった。しかし避難計画の叩き台となるハザードマップの信憑性に疑問符がついている。
 防災を考える際に、地形や気象条件、土地利用など現在の状況を検討するだけでは十分ではない。その土地の過去、歴史を知ることの重要性が見落とされている。
 日本では近代以降、人口の急増と都市への集中により、それ以前には人が住まなかった条件の悪い土地も居住エリアとなっている。「小氷期」と呼ばれる気候の寒冷期であった江戸時代を中心とする近世には、日本の人口は現在の四分の一、約三千四百万人(北海道、沖縄を除く)に過ぎなかった。この頃、多くの人々は経験的に災害に対して安全な場所に居住していた。しかし明治期以降、気候の温暖化とともに人口が急増し、不適切な土地利用が顕著になると同時に、その土地が歩んできた歴史や経験に基づく防災の知恵が徐々に失われてしまった。

危険なエリアに集積する人口{b・・・