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インドネシア経済の 深刻な「沈降」

通貨下落が「大統領選」を直撃

2018年10月号

「パニックに陥らないでください。我々の経済と政府はアルゼンチンやトルコより遥かに強いです。グローバルな不確実性で心配しないようにお願いします」
 インドネシアのルフット・パンジャイタン海洋担当調整相は八月、こう国民にSNSでメッセージを発信した。同国通貨ルピアが今年に入り対ドルで一〇%近く下落し、二十一年前のアジア通貨危機時の為替水準を下回ったことで、ジョコ・ウィドド政権は追い込まれている。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げなど外部環境により新興国市場全体が厳しさを増す中で、市場心理は悪化し、底を打つ気配がない。
 通貨ルピアはいわゆる「フラジャイル5(世界の代表的な五つの脆弱通貨)」のひとつ。まだまだ「最悪の時期は終わった」とは言えない。直近の金融政策を振り返ると、インドネシア中央銀行は通貨防衛のために、五月十七日、三十日、六月二十九日に続いて、八月十五日に今年四度目となる利上げを実施した。現在、主要政策金利であるリバース・レポ金利は年初から百二十五ベーシスポイント高い五・五%になっている。
 しかし、度重なる利上げにもルピアは安値を更新し続けている・・・