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経済

《クローズ・アップ》呉文精(ルネサス エレクトロニクス社長兼CEO)

無謀M&Aに挑む「トヨタの忠僕」

2018年10月号

 車載半導体大手のルネサス エレクトロニクスが、七千三百三十億円もの巨額投資で米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を買収する。しかし、この買収には金融機関関係者から「無謀な買収ではないか」との声が上がる。理由は高すぎる買収価格。同社の売上高は約九百二十七億円で、買収後ののれんを含む無形固定資産は一兆円に達する。「IDTが経営危機に陥れば、一気に数千億円規模の減損が生じる。米ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーの減損処理で半導体子会社を手放した東芝の二の舞いだ」と前出金融機関関係者は警鐘を鳴らす。こうした危険な買収にルネサスを走らせているのがトヨタ自動車の存在だ。
 トヨタは二〇一七年十月、開発中の自動運転車にルネサス製プロセッサーを採用すると発表した。IDTは通信用半導体に強く、ルネサスとのシナジーはないが、自動運転車に必要な技術を持つ。IDT買収は明らかに「トヨタのための大型合併」なのだ。トヨタはグループのデンソーと合わせると、ルネサスではINCJに次ぐ第二位の大株主。同時に車載半導体の主要顧客でもある。
 そのうえ「ルネサス社長兼最高・・・

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