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連載

本に遇う 第226話

昭和天皇の戦争責任
河谷 史夫

2018年10月号

「八月ジャーナリズム」という用語がある。毎年夏が来るたびに、新聞や放送が戦争ものを取り上げるが、それを揶揄して言う。
 先の戦とはアジア太平洋戦争を指すのは日本人には当然のことながら、われわれが「戦後」の感傷にふけっていた間に、朝鮮、ベトナム、アフガン、イラクと戦争続きのアメリカ人に、戦前とか戦後とか口にしたら、どの戦争のことかと聞き返されるだろう。
『永続敗戦論』の白井聡が毎日新聞の「メディア時評」に「平成最後の『八月報道』には、何か焦燥感のようなものがにじみ出ていた。来年の夏には『あの戦争』は『前の前の時代の戦争』となる」と書いていて、何のことかと訝った。そうか、来年は年号が変わるのだと気づくのにしばし要した。気鋭の現代史家も元号で時代区分をして怪しまないとみえる。
 元号は明治以降、一代一元になった。「臣民は陛下の赤子」であった戦前はともかく、「国民が主権者」の今日、元号で時代を画するのには抵抗がある。明治天皇が大元帥であった日清、日露を「明治の戦争」と呼び、昭和天皇が陸海軍を統帥した対中、対米英蘭の戦を「昭和の戦争」と称しても、「あの戦争」を来年の・・・