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日露平和条約という「毒饅頭」

安倍=プーチンに「黙約」はあるのか

2018年10月号特別リポート

 外交は、テーブルの下でやり取りされている内容が隠されていて表面には滅多に浮上しない。それだけに単純な論評は慎しまなければならない。とりわけ透明度のある民主主義国に対し、事実上の独裁者はテーブルの上下で勝手な言動をする。
 去る九月十二日にウラジオストクで開かれていた東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領は安倍晋三首相を傍らに置いたまま「今、思いついた」として、「一切の前提条件抜きにして年末までに平和条約を結ぼう」と提案した。同時に「この平和条約に基づいて友人として全ての係争中の問題に関する議論を続ける」とも語った。いったん平和条約が結ばれてしまえば、その中に何が書いてあろうと、相手にすべてのカードを預けることになる。経済のうまい汁を吸い上げるだけで現状維持は恒久化してしまう。
 恐ろしい「毒饅頭」であることは首相も側近も百も承知だろう。が、首相や菅義偉官房長官や河野太郎外相の反応は驚くほど「冷静」で、強烈な拒否反応は示さなかった。二十二回にわたる安倍首相とプーチン大統領との会談で何かの合意がすでにできているのだろうか。この提案が単なる思いつきでないことは、ア・・・