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社会・文化

北海道「水と紅葉」のコントラスト

澄明なる「錦秋の宴」の自然美

2018年10月号

 北国の秋は水も空気も澄明になる。夕暮れが早まり、日射しがほどよく和らいで、吹き渡る風が目にもとまらぬままひんやりと身に忍び込んでくる。
 ふり仰げば木々は紅葉、黄葉、また紅葉。空はどこまでも青く、高い。木の葉は葉緑素を失い、陽光をさえぎるほどの力はなく、薄く、ステンドグラスのように赤黄の色をつけ、地に光をまき散らす。
 私たちはひたすら透明な大気の底に住んでいる。

自然と人工が交じり合う

 どこまでも広がる空と水を、紅葉に彩られた低い尾根が複雑に区切っている。
 北海道北部の朱鞠内湖。「シュマリナイ」とはアイヌ語で「キツネの川」または「小石の多い川」。上川管内幌加内町にある、日本最大の広さを持つ人造湖(面積二千三百七十三へクタール)である。
 かつての谷間や小盆地を沈めた湖面は、フィヨルドのように複雑な入り江と半島、小島を形成し、どこまでも秋色に染まる。「湖畔」と呼ばれるキャンプ場や案内所がある小さな空間だけ人の立ち入りができ、湖岸線の大半はアクセス不能である。この広・・・