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経済

携帯料金「官製値下げ」のカラクリ

「業界疲弊」菅義偉の非情

2018年10月号

 首相、安倍晋三が勝ちを制した自民党総裁選―。振り返れば、その大勢が固まりつつあった八月二十一日、女房役の官房長官、菅義偉が発した“駄目出し”は強烈だった。
「携帯電話は今よりも四割程度下げる余地がある。競争が働いていないと言わざるを得ない」
 三社寡占の携帯キャリア大手に対する、にわかな指弾である。安倍政権による値下げ要請はこれが二回目。三年前の二〇一五年九月十一日、経済財政諮問会議の席上で首相自ら「家計への負担が大きい」と異例の発言をし、舞い上がった当時の総務相、高市早苗は「あたしがやらなきゃ!」と、料金見直しの有識者チームを急遽立ち上げた。今も「通信業界の9・11事件」と揶揄される騒動だ。
 しかし現在、総務相は安倍と初当選同期の野田聖子。史上最年少の三十七歳で郵政相(現総務相)に就いた経歴をもち、安倍への対抗心は強い。その野田に、首相官邸から「格が違う」と言わんばかりの上意下達の指示である。野田は「官房長官からエールをいただいた」と柳腰で応じつつも、「常日頃から総務省は(競争促進に)取り組んでいる」と賊心を見せた。
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