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「ICPO総裁拘束」習近平の苦渋

国際社会も絡む「一大政局」の可能性

2018年11月号

 中国広東省珠海市と香港、マカオを結ぶ世界最長の橋(全長五十五キロ)「港珠澳大橋」の開通式典が十月二十三日に珠海市で行われ、中国の習近平国家主席が出席し、橋の開通を宣言した。
 その三日前の二十日夜、この橋の開通式の準備に関わっていたある重要人物がマカオの自宅マンションから飛び降り自殺した。マカオに駐在する中国政府の最高位の幹部、マカオ特別行政区連絡弁公室主任の鄭暁松氏である。
 英国のオックスフォード大に留学経験を持つ五十九歳の鄭氏はこれまで、福建省副省長、共産党中央対外連絡部(中連部)副主任といった要職を歴任。昨年九月にマカオに赴任した。翌十月に開かれた第十九回党大会で、中央委員に選ばれた。計二百人余りしかいない中央委員の中、王毅外相兼国務委員らと並び、数少ない国際派とされている。宋濤・中連部長の有力後継者とも目され、中国共産党内で前途洋々の幹部の一人といわれていた。
 マカオ特別行政区連絡弁公室の発表で、鄭氏は「鬱病」による自殺とされたが、これを信じる共産党関係者はほとんどいないという。鄭氏は自殺する前日の十月十九日まで、過密スケジュールを精力的にこ・・・