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連載

Book Reviewing Globe 414

中国が強める「地経学的攻勢」

2018年11月号

 トランプ政権は、中国が米国の中間選挙で共和党を敗北させ、トランプ政権を弱体化させるため、さまざまな手を使って米国の内政に介入していると非難している。
 トウモロコシなど対中輸出依存度の高い地域を標的にし、その地域の政治家と支持層に圧力をかけていることを問題にしたとみられる。もし、そうだとしても、何ら驚くには当たらない。中国は、長年、台湾に対してそのような地経学的攻勢を行ってきた。
 一九九六年の総統選挙を前に、中国は台湾独立派を威嚇するためミサイルを発射した。しかし、それは台湾の住民の反発を買い、独立志向の強い李登輝当選を後押しした形となった。このため、中国は軍事力ではなく経済力による圧力に切り替えた。
 それまでは中国の改革・開放の助っ人として誘致された「台商」と呼ばれる台湾資本に対して、“李登輝・陳水扁一派”と距離を置くように、圧力をかけた。民進党支持派の「台商」の大陸進出店には、環境規制、労働基準、税制、防災体制などの面で嫌がらせをした。
 これらのムチ作戦にもかかわらず、二〇〇四年総統選挙は再び陳水扁が勝利した。・・・