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連載

《世界の キーパーソン》パトリック・シャナハン

INF離脱後の「宇宙軍拡」を担う

2018年11月号

 ドナルド・トランプ米大統領が十月二十日、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱すると表明した三日後のことだ。ワシントンのポトマック川とアナコスティア川合流点に臨む、米国防大学の敷地内で、マイク・ペンス副大統領が主宰する「国家宇宙評議会(NSC)」の公開会合が開かれた。
 NSCは「宇宙軍司令部」創設に関する六条の基本原則を採択した。米軍内に陸・海・空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く、六番目の軍隊誕生がいよいよ現実に迫った。今春、トランプ大統領が「宇宙軍を創設する」と言い出した時には、「空軍内に宇宙軍司令部があるのをご存知ですか?」と軍内から反対の声があがった。だが、大統領は意に介さず、NSCを作り、準備を急いだ。
 ペンス副大統領はこの日、「大統領はこのことばっかり、毎週『どうなった』と聞いてくるのだよ」と会場を笑わせたが、これは冗談ではない。数千億円規模と見られる新軍隊には、米国の軍事産業の莫大な利権がかかっているのだ。
 宇宙軍創設を国防総省側で進めるのがシャナハン。前職は航空大手「ボーイング」社の上級副社長だった。受注企業幹部が発注元に転身するのはさす・・・