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イスラム移民 「大増殖」のロシア

超「人口減」で国が乗っ取られる危機

2018年12月号

「たぶん五百万人の移民がモスクワにいる」―。衝撃的な数字をあげたのは、ロシアの首都に住む、ある社会学者だ。公式統計では首都の人口は約一千三百万人だから、四割近くを占める勘定だ。
 大半は旧ソ連の中央アジア五カ国とアゼルバイジャンのイスラム教徒である。ロシア人の人口が急減する中で、「今やロシア全土で六人に一人がイスラム教徒」という推計もある。

「六人に一人」がさらに拡大中

 モスクワ市内を少し歩くと、冒頭の数字が誇張だとは思えない。顔立ちが日本人に似たキルギス人が多いので、朝夕の通勤時間帯には特に目立つ。
「キルギス人専門のクリニック、床屋、商店、レストラン、ジムなど、キルギス人だけでどんな仕事もある」と、首都在住のキルギス人不法移民は言う。タジク人、ウズベク人、アゼルバイジャン人など民族ごとに独自のコミュニティーがある。住宅事情から特定地区に偏らず、ソ連時代に建てられたアパート群に散らばっている。
 正確な数字が分からないのは、多くが不法移民であるためだ。二〇一〇年のロシア国勢調・・・