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欧州で「七兆円」 金融詐欺が発覚

ドイツが震源「世紀の犯罪」の衝撃

2019年1月号

 ドイツを中心とする欧州の銀行業界が数年にわたって、総額七兆円以上の脱税詐欺の舞台になっていたことが発覚し、各国で捜査が始まった。
 顧客保有の株式を、銀行が空売り・空買いして、配当課税を逃れる手口で、ドイツでは「ドイツ銀行」を筆頭にほぼ全行が詐欺にかかわった模様だ。政府にも悪習を見逃した責任があり、アンゲラ・メルケル首相率いる大連立内閣は、徹底解明を求められている。

株式配当課税の還付金を詐取

 事件は、「CUM(配当あり)」と「EX(配当なし)」の操作による詐欺であることから、「CUM―EX(クメックス)詐欺」、または「CUM―CUM(クムクム)詐欺」と通称される。
 ドイツの株式配当課税は税率二五%。東部ドイツ復興税などを合わせると、二八~二九%になる。約二〇%の日本より、かなり割高だ。銀行保有の株式ならば、配当金には課税されない。
 このためドイツでは、株主総会の日に、保有株を銀行に空売りして税を逃れる(銀行には手数料を支払う)という慣行が、二〇〇一年からあった。ドイツ政・・・