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米軍需産業の知られざる「中国依存」

「レアアース輸入」が国防上の危機に

2019年2月号

「我が国は、驚くべきことに中国に依存しています。つまりレアアースの供給源が、中国だけしかないのです。これは、早急に解決すべき問題に他なりません」―。
 昨年四月、米商工会議所主催の講演会で、エレン・ロード国防次官(取得・維持担当)はこのように発言した。だが、彼女がいくらその八カ月前に米巨大軍事コングロマリット・テキストロンのCEOから業界特有の官民癒着で転籍してきたばかりとはいえ、「驚くべきことに」とは時期外れだろう。
 すでに十年近く前から、米軍の大半の兵器製造に欠かせないレアアースの供給は、とみに対立がエスカレートしている中国にほぼ頼っているという「国家安全保障上の戦略的脆弱性」(米会計検査院が二〇一六年二月に公表した報告書)が、複数の政府機関や民間シンクタンク、連邦議会等から指摘され続けてきたからだ。
 レアメタルのうち、十七元素に属するグループをレアアースと呼ぶが、特にジスプロシウムやユウロピウム、イットリウム等の五鉱種が兵器の製造には不可欠だ。たとえばヴァージニア級攻撃型潜水艦には四・一七トン、アーレイ・バーク級駆逐艦には二・三六トン、F35A戦・・・