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連載

Book Reviewing Globe 416

米中AI覇権争いの「その先」

2019年2月号

 専制政治体制の社会は持続的にイノベーションを起こせるのかどうか。自由な発想と議論と、社会に多様性があってこそ、ホンモノのイノベーションは生まれるのではないのか。そのようなこれまでの常識が、中国の異形のイノベーションの登場で揺らぎつつある。
 二〇一三年のウィーチャットのモバイル・ペイメントの出現が大きな分岐点となった。個人信用システムを利用して融資を受けた何万、何十万という若者がこのプラットフォームに群がり、起業した。李克強首相が昨夏のダボス会議で誇らしげに宣言した中国の「大衆起業家と大衆イノベーション」が立ち現れた。
「中国にはノーベル賞受賞者はいない。しかし、AIとアルゴリズムをいじりまわし、日々、何か新たな試みをする面白がり屋が湧き出てくる。ちょうど、電気を社会実装したときのトマス・エジソンをはじめとする米国の面白がり屋起業家たちと同じように」。
 著者は、中国のオンライン経済が生んだ最大の製品であり作品は、起業家に他ならない、と言う。
 AIには、インターネットAI、ビジネスAI、パーセプションAI、オートノマスAIの四つがある。中国は・・・