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韓国が壊す「アジアの秩序」

日米韓同盟「空洞化」の代償

2019年2月号特別リポート


 トランプ大統領の言動の不確実性のために米国の外交・防衛政策、とりわけアジア・太平洋政策の正確なイメージを確定するのは容易な業ではない。それでも大統領は上下両院全会一致で成立した、「アジア再保障イニシアチブ法」(ARIA)に昨年十二月三十一日に署名し、この法律は即日発効した。特色を言えば、いまの険しい米中関係を反映し、米国を挙げて台湾を守る姿勢を鮮明にしたことだろう。
 核開発をめぐって対立を深めている米朝両国間の緊張感が依然として続いている中で朝鮮半島、なかんずく韓国への言及はごく簡単に触れた程度だ。冷戦期に歴代の米政権がこの半島に築き上げた日米韓三角安全保障体制には中露両国に対する強力な橋頭堡を演じ、冷戦後も中国に対する安全保障体制として、揺らいではならないものであったはずである。
 米国のアジア政策の重点が韓国から台湾へシフトした理由は、文在寅政権の特殊性にある。文大統領を囲む政権の中軸が、北朝鮮土着の主体思想にどっぷり浸かって成長してきたからだ。共産主義あるいは共産主義系社会主義にはそれなりの哲学的普遍性はあるが、主体思想にどれだけの説得力がある・・・