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政治

「杉田和博副長官」が官邸を去る日

安倍一強「ブレーキ喪失」の危惧

2019年3月号

 総理大臣官邸の「最後のブレーキ」が壊れかかっている。「官僚最高位」である事務の内閣官房副長官を務めてきた杉田和博が、長引く体調不良を理由に、近く退官すると囁かれていることである。「安倍一強」と呼ばれる政治体制にも、官邸の暴走を食い止めるパワーバランスは存在した。それが崩れた後の展開を予想して、霞が関は戦々恐々としている。
 杉田の体調不良が顕著になったのは、二〇一九年の年初からだ。気管支炎のような咳が止まらず、休みをとることもあった。一二年暮れに総理大臣の座を奪還した安倍晋三の記者会見中に倒れたこともあり、四月で七十八歳になる元警察官僚を心配する声は、官僚のみならず、自由民主党の一部や公明党などにもくすぶってきた。
 杉田の去就に注目が集まるのは、その実務能力の高さゆえというよりは、霞が関を隅から隅まで知り尽くした人脈が、人事権を通じて中央省庁に対するグリップを強めてきた内閣官房長官・菅義偉への抑止力となってきたからだ。
 一口に「安倍一強」と言っても、必ずしも安倍一人に権力が集中しているわけではない。安倍の思い入れが強い分野は外交・安全保障や憲法改正で・・・