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社会・文化

室内楽の若き新星「葵トリオ」

欧州が認める才能を日本は「冷遇」

2019年3月号

 ミュンヘンARD国際音楽コンクールは、「コンクールのデパート」とも呼ばれる、世界で最も大規模な国際大会のひとつだ。華やかなスターを輩出するヴァイオリンやピアノなど独奏部門ばかりか、コントラバスや打楽器、ハープといったオーケストラのあらゆる楽器が種目に並ぶ。不定期開催ながら、弦楽四重奏やピアノ三重奏、木管五重奏、ヴァイオリンとピアノの二重奏などの室内楽も審査対象とされる。
 二〇一八年九月、五年ぶり十一回目となるピアノ三重奏部門が開催され、東京藝術大学出身のヴァイオリン小川響子、チェロ伊東裕、ピアノ秋元孝介から成る「葵トリオ」が優勝した。
 今世紀に入り審査規程が改定されたとはいえ、厳格な素点積み上げ方式で運営されていたミュンヘン大会は「優勝が出ないコンクール」として知られていた。現役最高峰の世界的ピアニスト内田光子や、現サントリーホール館長のチェリスト堤剛、現東京藝大学長澤和樹ですら「一位なし二位」にとどまっている。ピアノ三重奏部門の優勝は、今回で歴代五団体目。日本国籍の室内アンサンブルとすれば、一九七〇年に弦楽四重奏部門で優勝した「東京クヮルテット」以来の快挙だ・・・