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経済

日本たばこを襲う「巨額訴訟地獄」

世界中で狙われる「健康破壊企業」

2019年4月号

 日本たばこ産業(JT)にとって会社の存続に関わる訴訟地獄の幕が切って落とされた。今年三月、カナダの子会社JTIマクドナルドに対し、たばこの健康被害に対する一千四百八十億円の損害賠償を命ずる判決が出たからだ。先進各国では、たばこ会社を相手取った同様の訴訟が着実に増加しており、米RJRナビスコ、英ギャラハーなど相次ぐ大型の海外M&Aで世界第三位のたばこ会社にのし上がったJTだけが訴訟を逃れられるはずもない。さらに深刻なのはJTが成長市場として期待し買収を重ねた途上国でも今後、訴訟が起きる可能性が高まっていることだ。国内需要の減少に単純な海外進出で立ち向かおうとした浅知恵がJTの根幹を揺るがし始めた。
 カナダの訴訟はまさにこれからJTが直面するリスクを集約的に示している。まず、敗訴したJTIマクドナルドが、買収したRJRナビスコのカナダ子会社だったという点だ。海外M&Aには直接の買収対象企業だけでなく、関連会社にも大きなリスクが隠れていることが少なくない。住民の意識が高く、米国以上にたばこに不寛容なカナダの子会社はまさに見えない落とし穴だった。カナダでは二〇〇一年にブリティッシ・・・