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中国「危険鎮痛剤」輸出に悩む米国

現代版「アヘン戦争」死者二万人の恐怖

2019年5月号

 中国国内で製造される、合成の麻薬性鎮痛剤フェンタニルが、北米大陸に大量に輸出され、米中両国の通商交渉でも重大な問題になっている。
 フェンタニルはヘロインより数十倍も致死性が高く、米国だけで年間二万人以上の死者が出ていると推計される。中国は取り締まりに及び腰で、米国やカナダでは「中国はアヘン戦争を仕掛けている」との批判が沸き起こっている。

国際郵便で運ばれる麻薬性薬物

 問題の根深さを示すため、米司法省が中心となった大規模国際捜査を紹介しよう。話は六年前の二〇一三年春にさかのぼる。
 南部ミシシッピ州のメキシコ湾岸都市ガルフポートで、朝の警ら中だった警官は、ある若い女の車の後部ガラスが、異常に濃い色のフィルムに覆われていることに気づいた。
「ちょっといいか」と中を見ると、通称「スパイス」の合成マリファナとフェンタニルが見つかった。
 女は間もなく、オンラインで交際中の男から入手したと自供した。二千キロ以上離れた北東部コネティカット州の住民で、男が仲介業、女が末端の「運・・・