三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

医療IT「エムスリー」 ぼろ儲けの裏側

「医師囲い込みビジネス」で続く急伸

2019年5月号

 医師らを対象とする情報専門サイトを運営するエムスリーの伸長が著しい。二〇一七年度の売上高は九百四十五億円(前年度比二一%増)、営業利益二百九十七億円(同一九%増)で、時価総額は一兆二千四百億円。同年、米フォーブス誌が選ぶ「世界で最も革新的な成長企業ランキング」で五位にランクインを果たした。前身のソネット・エムスリーを設立してから二十年に満たない。急成長の背景には、いかなる「ボロ儲け」のカラクリが秘められているのか。
 ソネット・エムスリーは二〇〇〇年九月、元マッキンゼー・アンド・カンパニーの谷村格氏が創業した。ソニーが出資し、現在も三四%の株式を有する。収益の中核は「MR君」というサービスで、製薬企業のMR(営業担当者)が最新の医療や医薬品の情報を「m3・com」のサイト上から届ける。これまで製薬企業から医師への情報提供はMRが一手に担ってきた。だが近年、製薬企業と医師の癒着が指摘され、MRは医師に接触しにくくなった。その間隙を縫う形でエムスリーは、MRに依存しない営業ツールを求める製薬企業の需要に応えたわけだ。

登録数二十七万人で「独り勝ち」・・・