三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

多様性の時代が求める「新天皇像」

ケネス・ルオフ(天皇史家)

2019年5月号

 ―平成の天皇皇后両陛下をどう評価しますか?

 ルオフ 五つの特徴がある。最大の貢献は、社会で最も弱い立場にある人たちに常に手を差し伸べたことだ。被災者だけでなく、重度の障害や疾患に苦しむ人たちも訪ねた。これで、社会全体が弱者の存在を知った。「社会福祉の天皇」と言える。いったい、どれだけの政治家が社会的弱者のために、これほど時間を使うだろうか。

 第二は、好ましからぬ国粋主義や大衆迎合主義を近づけなかった。象徴天皇で政治的役割はないとはいえ、皇室の周りに「日本第一」を叫ぶ輩がいれば、社会は影響を受ける。

 第三は、「戦後の終結」に努力したことだ。二〇〇一年十二月の記者会見で、桓武天皇の生母は百済の武寧王の子孫だったとして、「韓国とのゆかり」を語ったのは非常に印象深かった。

 第四は、非常にコスモポリタン(世界市民)的だったことだ。世界中どこへでも出かけて、いろいろな人と分け隔てなく会った。

 第五は、両陛下が信じられないほど幸福なカップルで、素晴ら・・・