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社会・文化

醜聞に沈む名門「榊原記念病院」

臨床試験「中止騒動」の内幕

2019年6月号

今や医は仁術ならぬ、算術なのか―。国内で有数の心臓病専門病院である榊原記念病院(東京・府中市)で、幹部医師が論文不正に関わり、臨床研究が中止されるという異例の事態が起きている。研究を取り仕切ってきたのは、元理事長の息子である総合診療部部長の細田徹医師。不正が確認された論文の共著者でもある。同病院では近年、東京大学医学部第三内科出身の重鎮らが経営を牛耳るようになり、血縁や学閥による縁故採用が進む。病院の肝である臨床を軽視し、研究実績や経営最優先の「改革」で、外科中心から内科中心の医療方針に転換したはいいが、病院を支えた名医たちが相次いで脱走する事態に。派手な実績作りのためか最低限の倫理観も見失い、患者にとって危険な、不正な論文に基づく臨床研究が行われていたというから噴飯物だ。名門病院崩壊の足音が聞こえ始めた。
 今年四月、榊原記念病院は虚血性心疾患の患者に対して、患者自身から採取した心臓幹細胞を移植する再生医療の臨床研究を一時停止した。理論的根拠としていた米ハーバード大学の臨床研究(SCIPIO試験)に関する論文に不正が確認されたとして、英『ランセット』誌が撤回したためだ。撤回・・・