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社会・文化

北海道の初夏に 「花々」を愛でよ

「リラ冷え」の季節に香る街角

2019年6月号

 北海道の年配の人たちは、津軽海峡より南を「内地」と呼ぶ。自分たちは「外地」なのか。開拓に来て、ひと旗揚げたら戻りたいのか、遠く離れた故郷を懐かしむのか。今では口にする人も少ないが、そこはかとなく屈折した感情が漂う。
 その内地が梅雨でじとじとと湿っぽくなるころ、北海道はからりと晴れ、乾いた風が青空の下の新緑を吹き抜ける、一番いい季節を迎える。長雨を避けて、学会やプロ野球公式戦が北海道で開かれるのもこの時期だ。
 そんな季節でも、オホーツク海の冷たい高気圧が張り出してくると、昨日の夏日がきょうは十度と一気に気温が下がり、重ね着の襟をかき合わせ、ストーブに再点火する羽目になる。五月下旬から六月、札幌を彩る街路樹、ライラックが咲き誇る時期なので、「リラ冷え」と呼ばれる。
 リラ(lilas)はフランス語、ライラック(lilac)は英名。作家・渡辺淳一が札幌を舞台に書いた『リラ冷えの街』で広く知られるようになったが、元は女流俳人榛谷美枝子による一九六〇年の造語だという。
 リラ冷えや 睡眠薬は まだきいて
 開拓の首都として、平坦地に碁盤の目・・・