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ロシアで広がる「スターリン礼賛」

大虐殺者に好感「七割」の真因

2019年6月号


 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の下で、ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンの復権が進んでいる。大統領が独裁傾向と国家主義を強める中で、スターリンを「ロシア史上の英雄」と再評価しているためだ。
 最新の世論調査では、ロシア国民の七割がスターリンを「肯定的に評価」しているとされ、若年層の半分が「スターリンの犯罪について全く知らない」と答えている。ドイツのアドルフ・ヒトラーと並び、二十世紀最悪の「虐殺者」の再評価は、ロシア政治が危険な坂を下っていることをうかがわせる。
 日本が十連休にどっぷりつかっていた、五月上旬のことだ。
 ロシア全土も五月一日のメーデーから、九日の戦勝記念日まで、お祭り騒ぎが続いた。ロシア人が連日酔いつぶれるのは毎年のことだが、モスクワ滞在が長い邦人翻訳家は、「今年はこれまで経験したことがないほど、スターリンの肖像が目立った」と言う。
 特に戦勝記念日には、シベリアのノボシビルスク市で、スターリンの胸像がお披露目された。モスクワなど都市部の行進には、スターリンの肖像があふれた。
 いずれも、ソ連共産党の後継・・・