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経済

不祥事連発「第一三共」の断末魔

「根腐れ」合併企業の長くない余命

2019年7月号

 第一三共で不祥事やミスが続発している。今年三月には抗生剤カルベニンが欠品。溶出規格の自主基準を逸脱した止血剤トランサミンカプセルは自主回収。さらには、製造トラブルで百日咳ワクチンの生産が停止した。また同月、はしか風疹混合生ワクチンの品質試験の不備が発覚する。これは決して偶然の連鎖ではない。第一三共の元社員は「合併企業のなれの果てだ」と断じる。
 第一三共は二〇〇五年に三共と第一製薬が合併して設立された。三共は一八九九年にアドレナリンの抽出に成功したことで有名な高峰譲吉氏が創業した。第一は一九一五年、東京帝国大学薬学科教授や貴族院議員を務めた慶松勝左衛門が設立したアーセミン商会にさかのぼる。いずれも日本を代表する老舗だ。国内の売上高四位の言わずと知れた大手製薬企業である。
 合併企業に付き物なのが人事抗争だ。同社も例外ではない。合併当時の会長は第一出身の森田清氏、社長は三共出身の庄田隆氏だった。後の迷走は、この二人を抜きに語り得ない。森田氏は一九六二年に学習院大学政経学部を卒業し、第一へ入社した。薬学部卒が幅を利かす製薬企業で異色の存在だ。
 その森田氏が・・・