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WORLD

米露核軍縮条約が 「全滅」する日

新時代兵器「開発競争」が本格化

2019年7月号


 米国とロシアの核兵器大幅削減を定めた「新戦略兵器削減条約(新START)」が、風前の灯火である。条約の延長期限は二〇二一年二月五日だが、ドナルド・トランプ米大統領は延長に向けた再交渉を遅らせているばかりか、「中国を交えた三国軍縮条約に変えよう」などと思い付きを口にするだけだ。
 失効すれば、世界の軍縮にとって、中距離核戦力(INF)全廃条約から米露双方が離脱する以上の大打撃だ。米露とも新STARTでカバーできない最新鋭の核ミサイルやレーザー兵器の開発など、さらに危険な軍備拡張競争に早くも突入している。

禁断の恋の元スパイが大出世

 話は二年前の一七年六月にさかのぼる。
 中西部のはずれにあるサウスダコタ州は、人口約八十万人。米国でも有数の過疎地だ。そこで、五十七歳の米軍の元女性スパイが、かつての不倫相手と結婚式をあげた。現在、軍備管理・国際安全保障担当の国務次官として、米露軍縮協議にあたるアンドレア・トンプソンである。
 彼女は二〇〇〇年代後半、アフガニスタンでマイ・・・