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米国防総省の危うい「民間委託」路線

戦争煽る「軍産複合体」の不気味

2019年7月号

 今年三月二十八日、米国ボルチモアの連邦地裁で、報道は地味ながら重要な事件の判決があった。史上最大規模とされる量の機密内容を含む政府の内部資料を不正に持ち出したとして、被告のハロルド・マーチン三世(五十四歳)という巨漢の元海軍大尉が、禁錮九年の有罪判決を受けたのだ。
 マーチンがメリーランド州グレンバーニー郊外の自宅でFBIに逮捕されたのは、二〇一六年八月二十七日。家宅捜査でNSA(国家安全保障局)やNRO(国家偵察局)、CIA(中央情報局)といった諜報機関をはじめ、国防総省や一〇年に創設されたサイバー軍等の内部資料が五十テラバイト分(単行本にして約五千万冊相当)も押収された。
 今回、刑が比較的軽かったのは、資料を外部に流した形跡がなく、動機も弁護側が「精神疾患」を主張するほど特定の意図が見出せなかった理由による。では、なぜこうした犯行が可能だったのか。
 一九八八年から六年間、海軍に勤務したマーチンはその後、コンピュータの知識を活かし、国防総省や諜報機関のコンサルタント等を手がける複数の民間下請け会社に勤務。そこで、除隊後も機密資料に触れる機会を得た。・・・