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ロシアにすがる習近平

「反米同盟」で抱き合う中露

2019年7月号特別リポート

 香港における異例の大規模デモ、習近平国家主席の唐突とも言える平壌訪問、トランプ大統領から北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に宛てた親書、と大阪での主要二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に矢継早にニュースが飛び出している。いずれも隠れた主役は中国の習近平主席だが、この中国の最高指導者が国内の政治的安定を確保したうえで、独自の外交を難なくこなしているとの見方にはかなり無理があるようだ。
 中国の指導者に重くのしかかっているのは経済の不振であり、それに拍車をかけているのは米国との貿易戦争だ。正直に言って、この争いは最初から中国に勝ち目はない。関税引き上げのダメージを受けるのは米国よりも中国の方が大きいことは最初からわかっていたからだ。だが、国内の政治状況は習主席のあからさまな対米譲歩を許さない。
 最近米国の専門家が警鐘を乱打している、中露両国のただならぬ接近にはそれなりの戦略的理由がある。習主席がプーチン大統領と、タジキスタンの首都ドゥシャンベで、誕生日のお祝いをしていた六月十五日の土曜日に、香港の林鄭月娥行政長官は、香港史始まって以来の規模の大衆デモに屈する形・・・