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社会・文化

高齢者こそ「予防接種」が必要

感染症に無防備な「ワクチン後進国」

2019年8月号

 世界中で今、反ワクチン運動が盛り上がる一方、世界保健機関(WHO)はこれを今年の公衆衛生学的問題の十大リスクの一つに挙げ、対立が先鋭化している。日本ではあまり知られていないが、世界はこの国を反ワクチン運動の中軸と見なしている。英科学誌「ネイチャー」が六月十九日号で「日本は世界で最もワクチンが信頼されていない国の一つ」と指摘したほどだ。
 七月初旬、かの前田匡史・国際協力銀行総裁(六十一歳)が風疹を発症した。彼は六月末に大阪市での主要二十カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて開かれた会合に出席しており、周囲に感染させた可能性が高い。
「こんなことは他の先進国ではあり得ない」。渋谷健司キングス・カレッジ・ロンドン教授(公衆衛生学)はそう話す。先進国では「高齢者にもワクチンを接種することが常識」だからだ。にもかかわらず、日本ではワクチンが信頼されていないばかりか、高齢者へのワクチン接種の必要性が議論されることもほとんどない。

ワクチン「再接種」は不可欠

 実は、日本では高齢の「感染症被害者」が・・・