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中南米「移民ビジネス」の悪行三昧

「犯罪組織」を肥え太らす米国の罪

2019年8月号

 ドナルド・トランプ米大統領が、中南米からの不法移民に対する強硬措置を打ち出す中で、メキシコの麻薬カルテルが移民ビジネスを急拡大している。米国への密入国支援で荒稼ぎするほか、移民希望者を人質にした身代金略取、移民を麻薬の運び屋に使う事業まで、搾取の限りを尽くしている。
 メキシコを筆頭に、中米諸国の麻薬戦争は激化する一方だ。メキシコでは毎年、史上最悪を書き換え、今年第1四半期だけで八千人以上が犠牲になった。ワシントン発の「移民危機」は、移民問題と麻薬戦争の双方を悪化させている。

「グスマン信仰」で選ばれる西ルート

 七月十七日、メキシコの麻薬王「エル・チャポ」ことホアキン・グスマンに対し、米ニューヨーク・ブルックリンの連邦地裁は、「終身刑プラス禁錮三十年」の刑を言い渡した。米国の司法機関が長年続けていた「対麻薬カルテル戦争」で、画期的な判決だ。
 ところが、メキシコ国民は驚くべき反応を見せた。グスマンの娘が始めた「エル・チャポ」ファッション・ブランドが飛ぶように売れ、メキシコ国内では「ひど・・・