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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》原発テロ対策

電力会社に「脱原発」迫る無理難題

2019年8月号

 来年七月に開幕が迫った東京オリンピック―。一年後、訪日観光客で溢れ返る首都圏は、祭典特需に沸騰していることだろう。翻って西日本は、下手をすると消費増税に電気料金値上げが重なり、五輪バブル後の不況に拍車が掛かっているかもしれない。
 なぜなら、来年三月の川内一号機を皮切りに九州電力、関西電力、四国電力の原発が相次ぎ止まるからだ(百十三頁の表参照)。
「特定重大事故等対処施設」―。原子力規制委員会は四月二十四日、電力各社が建設中の通称「特重」と呼ばれる原発のテロ対策施設が、五年間の設置猶予期限までに完成しない場合、原発の運転停止を命じる判断を下した。後述するように特重は、原子炉建屋がテロリストによる航空機衝突に襲われても、原子炉の冷却機能を維持する機微情報施設。今や多くの原発ではシールドマシンが唸りを上げ、巨大な“地下壕”の建設が進められている。が、その工事が期限内に終わらないのだ。
 一部のメディアや市民団体は「電力会社の怠慢」と指弾し、規制委の“英断”に喝采を贈る。しかし、一千億円を超える特重の費用対効果に・・・