三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

防衛省「内局無力化」が招く危機

背広組「左遷人事」が示す政権の病理

2019年9月号

 七月末、新聞の片隅に載った人事情報の一角に注目した人は世間では皆無に近いだろう。「防衛監察本部副監察監 芹沢清」。防衛省人事の中に紛れたこの異動は防衛省の軌跡を熟知する人々の間で驚きと虚無感をもって受け止められた。その理由は、くだんの人物が若き日から「組織を背負っていくエース」と認識されていたからだ。なぜ彼は完膚なきまでに主流から外されたのか。この一人の官僚の人事は物言えば唇寒しとばかりに「安倍一強」で萎縮し、霞が関に愛想を尽かす官僚群の悲哀と悲運を投影しているだけではない。芹沢氏は、長期覇権を巧みに遊弋し、防衛省内局の力を根絶させようと策動する「政権内抗争の人身御供」(防衛省OB)なのだ。
 防衛省の事務方は「背広組」と称され、自衛官の「制服組」と区別される。背広組はほとんど内局に所属している。背広組の中でも国家公務員総合職(旧Ⅰ種)に合格して入省した者はキャリア、それ以外はノンキャリと呼ばれるのは他省庁と変わらない。芹沢氏は名門・麻布中高を経て東京大学法学部を卒業。Ⅰ種試験に合格したキャリア官僚として防衛省の本流を歩んできた。だが、今回の異動で就いた防衛監察本部副監察監・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます