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「平和ボケ」の日本外交

安保環境「急変」でも動かぬ安倍政権

2019年9月号特別リポート

 簡単に言えば、先の大戦後に連合国側の強い意向によって、軍事的には二度と立ち上がれない鋳型に日本とドイツは押し込められてしまった。結果として生じたのが、この両国に深く根付いたパシフィズム(反戦主義)という現象だ。が、戦後体制と称されたこの枠組みにもようやく耐用年数が訪れてきた。
 北朝鮮が八月末現在、七回にわたって行った短距離新型ミサイル発射は日本を射程に収めているにもかかわらず、トランプ大統領は米本国に到達する大陸間弾道弾ではない、と無視している。戦後体制の支えは米国の核の傘による保護であったにもかかわらず、その有効性が事実上否定されていても日本は沈黙を守っているだけだ。
 長年にわたってジャパン・タイムズ紙にコラムを書いているインドの地政学者ブラーマ・チェラニー氏は、八月十六日付に「日本、トランプから一喝」と題する一文を書いて、日本はどうしてこの際立ち上がれないのだろうかとの深刻な疑問を呈している。折から、韓国は八月二十三日に日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告してきた。日本は無視しているが、韓国側の単なる「誤解」だと高を括っているのだろうか・・・